東京大学及び自治医大と共同でALS遺伝子治療の前臨床共同研究を実施 | 株式会社FHTホールディングス

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東京大学及び自治医大と共同でALS遺伝子治療の前臨床共同研究を実施

株式会社ジオネクスト(以下「ジオネクスト」)は、ジオネクスト子会社の株式会社遺伝子治療研究所と国立大学法人東京大学(以下、「東大」)及び学校法人自治医科大学(以下、「自治医大」)と共同で筋萎縮性側索硬化症(以下、「ALS」)遺伝子治療の前臨床研究を実施することを決定いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。

共同研究の趣旨

ジオネクストは平成26年5月に先端医療関連事業を行う株式会社遺伝子治療研究所を設立いたしましたが、このたび同社と東大及び自治医大と共同でALS遺伝子治療の前臨床研究を実施することといたしました。本研究におきましては、東大は組織解析、データ分析等を担い、自治医大はベクターの作成、試験の実施などを担い、遺伝子治療研究所は両大学とともに研究全般に関する企画を立案するとともに、研究資金の提供を行います。

本前臨床研究は、昨年実施された病態モデル・マウスに対する効果検証を実施した研究(注1)に続く、大型動物(カニクイザル)による安全性試験の位置づけです。また、臨床応用のための安全性を検証する前臨床研究であり、本共同研究者らが明らかにした理論(注3)の検証であります。また、すでに研究遂行に必要な遺伝子組み換え・動物実験委員会の承認を得ており、倫理的配慮に基づいて実施される研究であります。

ALSは主に中高年に発症し、進行性の筋力低下や筋萎縮を特徴とし、数年内に呼吸筋麻痺により人工呼吸器の装着なしでは死に至る神経疾患であり、現時点で病勢の進行を止める有効な治療方法はありません。ALSの大多数(90%以上)は遺伝性のない孤発性ALSであり、長らく原因不明とされてきましたが、本共同研究者らは、そのメカニズムを英国の学術雑誌であるNature誌掲載の論文等(注2)で明らかにいたしました。

ベクターとして使用するAAVは、AAV9型が血液脳関門を透過し神経疾患の遺伝子治療に適したベクターであることから、本共同研究者らがAAV9型を改変して、目的とする遺伝子を選択的に脳脊髄のニューロンに発現しうるものであります(特許出願:自治医大)。ALSの治療においては、可能な限り多くの脳と脊髄の運動ニューロンに遺伝子導入することが望ましいため、このAAVベクターはAAV9型を一部改変して遺伝子導入効率を上昇させているほか、神経細胞特異的に遺伝子を発現させるために、特殊なプロモーターを使用しております。AAVは遺伝子治療のベクターとして臨床研究が行われており、病原性がなく自立増幅能も欠如している点で、安全性も高いと言われております。

今後は、本前臨床研究と並行し、臨床研究及び先進医療制度の適用申請の準備を進め、本前臨床研究の結果を確認した上で、遺伝子治療の早期実施に向けた活動を行っていく予定であります。

(注1) Kwak, S. et al: EMBO Mol Med 5, 1710-1719, 2013
国際医療福祉大学臨床医学研究センター・郭伸特任教授(東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター臨床医工学部門客員研究員及び遺伝子治療研究所顧問を兼)らの研究グループは、自治医大・村松慎一特命教授(遺伝子治療研究所取締役を兼務)と共同で、脳や脊髄の運動ニューロンのみにADAR2(RNA編集酵素)遺伝子を発現させるアデノ随伴ウイルス(改変型AAV9/3)ベクターを開発し、このベクターを孤発性ALSの病態を示すモデル・マウスの血管に投与したところ、ALS特異的な病理変化であるTDP-43機能の正常化が確認され、運動ニューロンの変性と脱落及び症状の進行を食い止めることに世界で初めて成功いたしました。

(注2)Kwak, S. et al: Nature 427, 801, 2004 / Kwak, S. et al: Neurobiol Dis 45, 1121-1128, 2012
ALSの大多数(90%以上)は遺伝性のない孤発性ALSであり、長らく原因不明とされてきましたが、本共同研究者らは、孤発性ALSの運動ニューロンの解析から、AMPA受容体のサブユニットGluA2に本来生ずべきRNA編集を欠いた未編集型GluA2が発現していること及びこれがRNA編集酵素であるADAR2酵素の発現低下により引き起こされる疾患特異的分子異常であることを英国の学術雑誌であるNature誌掲載の論文等(注2)で明らかにいたしました。未編集型GluA2の発現はALSの神経病理学的指標であるTDP-43病理及び細胞死の原因であることから、この細胞死カスケードが孤発性ALSの病因に密接に関与することが示されております。これらの知見は、ADAR2活性の正常化が孤発性ALSの遺伝子治療標的であることを意味しております(注3)

(注3)孤発性ALSの病因に基づいた遺伝子治療

2014-08-19_g01

共同研究の概要

研究実施主体 国立大学法人東京大学 及び 学校法人自治医科大学
共同研究者 株式会社遺伝子治療研究所
研究題目
ADAR2発現AAVベクター投与によるALS遺伝子治療の前臨床研究
研究内容
ALSに対するADAR2発現AAV9/3ベクター髄腔内投与による遺伝子治療の前臨床研究(カニクイザル)
研究期間(予定)
平成26年8月より、同27年6月まで
研究頭数(予定)
3~4頭

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